興信所が探偵カウンセラーになるとはどういう事なのか、首をかしげられる人がほとんどだと思います。この本をご覧に頂いた方に、ご理解頂くために探偵カウンセラーとはどういうものかについて説明いたします。
[1]探偵カウンセラーとは
探偵カウンセラーの定義は次のとおりです。
探偵カウンセラーとは「調査能力、プロファイリング、カウンセリングの専門の力量を備えた問題解決型の調査業者」の事を言います。これは今までになかった新しい興信所の概念です。
この概念が生まれたのは先に書きましたが、調査をご利用頂いた方、或いはこれから調査をしてみようとお考えになっている方々から、興信所に対するご意見、ご要望をお聞きした結果、又、苦情を教訓として生まれた結果の「探偵カウンセラー」です。
最近のアンケートでもそうでしたが、興信所に問題解決能力が求められているのが分かりました。体験上からもそうでした。私が興信所を開業して間もないころ、30年程前のことです。あるご婦人の依頼により夫の素行調査を引き受けた時のことです。そして、夫の不倫の事実及び事実関係についての調査結果を報告しました。
依頼者は、調査結果に「やっぱりそうでしたか。思っていたとおりです。」と、おっしゃって調査結果に納得されたのです。私は、不倫の証拠も撮れた上、相手の身元も分かったので、ご期待に応えられて良かった。と、思って自信を持って報告書をお渡ししたのでした。しかし、依頼者はこうもおっしゃったのです。「これから私、どうしたらいいのでしょうか。」その言葉を聞いた時、私はハッとして言葉が出なかったのでした。
調査で気になっていた事はハッキリしたが、その事実に依頼者はどう向き合えばいいのか、依頼者と夫の今後の関係はどうなるのか、夫と不倫相手との関係は、子供さんとの関係は、これからご自分を含めた家族の人生は、等々について新たな悩みが依頼者の頭をよぎったのでしょう。
調査の目的は、いらざる悩みを解消して安心を獲得するためだとすると、調査結果の報告を受けただけではスッキリしない依頼者もあるという事がその時、分かったのです。調べるだけではなく、それを取り巻く悩みが解決しなければ調べて良かった、という事にはならない場合もあるのだと気付かされたのでした。
調べるだけでお終い。これでは、依頼者の立場に立って考えてみると、かえって中途半端な状況に置かれるケースもあるのです。うがった見方をすると、調べた結果新たな悩みを抱え込んでしまうことにもなりかねません。
そこで、調査結果への対応に関しても依頼者の希望に添った解決をはかるにはどうすればいいのかの相談に乗れて、解決策を見いだすお手伝いが出来なければ依頼者のご期待に応えられないことが分かったのです。
この点についても先に書きましたが、調査後の事は責任持てません。あとの事は弁護士さんに相談して下さい。我々は、プライバシーには立ち入りませんので、という、プライバシーに深く関わる調査をしておきながら対応策を聞かれると、とんちんかんな返事を正当だと思っている興信所もある様です。これらを教訓に、これからの興信所は依頼者に失望されない対応が出来なければなりません。
前記の様な返事しかできない興信所は、引き受けた調査結果の報告について自信を持てないのか、或いはもの事の処理の方法を全く知らないかのどちらかではないでしょうか。いずれにしましてもお金をもらって提供したサービスの活用の方法を説明できないのでは、プロがした仕事として役に立たないのではないでしょうか。
この件に関して調査を依頼された方のご意見は、聞いても仕方がないだろうと分かっていても聞かずにいられず聞いてしまった。むなしい気持ちになった。と、おっしゃっていました。調査で事実関係が分かっても依頼者の問題解決に役立たない調査では調べた意味がありません。この手の調査に関して、ある人にいわせると、なんだか損をした気持ちになった。ともおっしゃっていました。
色々と制約のある個人に関わる調査ですが、調べて良かった。これで助かった。と、依頼者に喜んで頂けるには21世紀の今、興信所の価値を高めるにはどの様な姿であるべきかについては先に書いた通り、「シッカリ調べて欲しい。」「料金が全額あと払いだと信頼できる。」「調査後の相談に乗ってくれるところに頼みたい。」という結果でした。
以上の事からこれからの興信所は、事実に基づいた正確な調査結果の報告が出来る様に更なる「調査能力の向上」を図ること。調査で分かった事実から真実を導き出す「プロファイリング」の技法を身につけること。(詳しい調査結果の情報を得るための技法)そして、調査後にご相談を受ければ、ご依頼者の立場に立った正当なアドバイスが出来る「カウンセリング」の能力を身につけること。
これらの事は、お客さんの方から今後の興信所のあるべき姿について提案頂いたのです。これは、単なるアンケート結果ではなく興信所に対するお客さんの要望です。又、改革の方向をお客さん、つまり社会が提案してくれているのだ、ということになります。
この事は社会から興信所を見た場合、興信所は個人の問題に深く関わる仕事なので調べるだけではなく、調べた後の事後処理の方法についても専門家でなければならない、といわれているのに均しいのです。従って21世紀の興信所は、調査と情報分析、カウンセリングの能力を備えた「探偵カウンセラー」が主流になる、という結論に至ったのです。
[2]調査能力とは
興信所に夫の不倫調査を依頼された方が、調査後に調査結果への対応策をお尋ねされたところ、依頼者が期待されていた返事がかえってこなかったことは、調査結果に至る被調査人(調べられる人)の個々の行動等についての意味が分からなかった点もあるようです。行動の結果だけを、「こうした」「こうだった」という結末だけの結果報告だけだったのではないでしょうか。つまり、被調査人の連続した行動を把握できていなかった様に思います。
言葉は嘘をつくが行動に嘘はない、という言葉の意味
人間は誰でも行動をする時は、その人自身の行動の目的と意味があります。それは、自覚して行動する場合も無意識の行動も含まれます。自覚的であろうが無自覚であろうが行動はその人の本心の表出です。そして、意味があります。その行動の意味を分かって理解できなければ、依頼者が納得する調査報告にはならないのではないでしょうか。
又、杜撰な調査が行われた結果の報告は、依頼者が何とかしたいと思っていらっしゃる案件の問題解決に役立たないでしょう。杜撰な調査結果の報告は、事実が不確かですので問題外です。杜撰な報告から真実を見つけ出そうとすると、とんでもないことを真実のように報告し間違った結論を導いてしまいます。
これらの杜撰な調査報告はよく聞くお話です。例えば不倫調査では、不倫相手を適当に探し出して事実と違う人を不倫相手だといって報告してきた。あるいは、取材力がないのをカバーするために、どのようにでも解釈できる文書が書かれたものが調査結果だといって報告をうけた。これ何、と思われる調査結果の報告は苦情としてよくお聞きします。
これらの苦情は、担当した興信所に調査能力がない結果、ご依頼者に迷惑をかけている事例です。この様な杜撰な調査報告をする興信所は調査能力を磨かなければ成りません。
[3]プロファイリングとは
行動には意味があるといいました。その行動から意味をくみ取るのも「プロファイリング」のひとつの技法です。興信所の調査は、尾行及び見張りを主とする素行調査と、取材を中心とする身上調査・結婚調査などに大きく分かれます。どちらの場合でも、被調査人に直接話を聞くことはしません。
被調査人の行動からその意味をくみ取ったり、生育歴及び学問とか仕事でどの様なことを学び身につけたのか、又はつけなかったのか、等々で被調査人のものの考え方(性格)を大まかに分かろうとする方法が「プロファイリング」です。
「プロファイリング」という言葉は、警察が犯罪の容疑者を特定するひとつの技法としてアメリカのFBIで使われていることはテレビなどを通じてよくご存じだと思います。日本の警察も積極的に「プロファイリング」の技法を研究しているようです。中には既に取り入れている警察も幾つかある様にお聞きしました。
私たちは警察ではありませんので、プロファイリングの技法を犯罪捜査に利用するわけではありません。犯罪捜査に使うでもないプロファイリングを我々のような調査業にどう生かすのか、というと、行動の目的を推測したり、人となりをより詳しく知るための方法として活用します。
ある人の行動に隠された真意を分かりたいとか、ある人と結婚したいと思うけれど結婚後の生活がうまく行くかどうか気になる時にプロファイリングの技法による分析は大変役立ちます。
プロファイリングの事例です。
人間関係の場面で、相手はどの様な人なのか分からないので困っています。何処までのお付き合いをすればいいのかそれが知りたいのです。と、問われたと仮定します。対象者が仮に転勤族の家庭で育った人だとしましょう。
転勤族といわれるご家庭は通常2〜3年で赴任先が変わる人が多いようです。
すると生まれてから人格の形成がほぼ完成される中学から高校生の頃にかけての生活環境の変化は、6回前後住所が変わることが想定されます。
小学校の高学年から中学生の頃にかけての転地は、人間形成に特に影響します。この頃は自分の力で友達作りに励んで人の気持ちや考え方を学んで自分のものの考え方の完成に近づける時期でもあります。
この時期に転勤を数回繰り返すと、その人の人間関係の関わり方は非常に表面的になります。友達付き合いも深い付き合いは避けるようになります。表面的で無難なお付き合いをするようになります。それで本人は満足しているのか、というと、決して満足してないのです。もっともっと深くお付き合いして人間関係も強いものにしたい、と思っている友達もあります。
しかし、転勤で親しくして付き合いのあった友達と別れるのがつらいので(過去に経験しているので)、付き合いはどうしても浅くなるのです。
この様な人間関係のあり様を学習してきた人は、自分の本心からの友達はできにくいのです。深く付き合うのを無意識で避ける様になります。表面上のお付き合いの友達はできます。又、人間的には何となく身勝手になります。自分のことを守りに入るのです。
1人の人間が育まれた人間的な土台が希薄になるので表面的になります。現代風なのかも知れませんが、味のない人間になります。しかし、大人になって自分のことに気付いた人は直せます。気付かなかった人は、いつまでも人間関係で欲求不満を抱えます。独善的なところが目立つ傾向になる可能性もあります。
この様にして、プロファイリングをかけることで、ある人物の基本的な人となりが分かります。それは、我々の調査に大変役立ちます。プロファイリングは、何も人物をより理解するためだけとは限りません。もの事の真実を見て行く一つの方法としても役立ちます。どの様な性格の傾向を基本にしているのかが分かる様になります。
自慢になって大変恐縮ですが、私のところで結婚調査を依頼された方の中に、どうしてあそこまで分かったのですか。所見に書かれていた言葉を信じました。その通りでした。等々のお言葉を頂くと同時に二度三度と調査をご利用頂いている方もあります。
私は、自分の経験と現在の社会環境から興信所の立場などを考えると業者はプロファイリングの技法を身に付けるべきだと強く思います。ここでいうところのプロファイリングは、経験と各種学問を合わせた学際的手法によるものですので、調査だけではなく色々な面で役に立ちます。
重ねていいます。調査結果をプロファイリングすることで被調査人の行動の意味とか大まかなものの考え方、つまり人となりがおおよそ分かります。これは、調査で分かったことをより詳しく理解する方法でもありますので、調査結果の事実に表れた真実を引き出す手法でもあります。
[4]カウンセリングとは
興信所にカウンセリングは何故必要なのかです。
興信所などが依頼を受けて行う調査は、依頼者が企業であっても団体であっても個人の場合でも調べられる人は個人になります。個人の何事かが分からないので知りたい、という調査依頼です。
調査の結果、何事かの事実が分かると同時に解決案が明らかになってそれに向かって行動できるケースはカウンセリングも何も必要がないでしょう。しかし、調査を依頼する側の人の多くは、初めての方が多いのです。そうすると、調査結果が出ても初めての事柄にどの様に対応すればいいのか迷われる人も多くみられます。
中には迷いに迷って調査結果を活用されない方もあります。何らかの案件を解決するための調査でした。しかし、調査結果への対応に迷われるのです。それは、先にも書きましたが初めての経験であることと、問題を解決するために行動を起こせば状況がさらに悪化するのでは、などとお考えになる場合、解決のための行動は起こせないでしょう。
調査結果への対応に関してのご質問は沢山頂きます。どの様にすればいいでしょうか、という様にです。そこでまず、調査を依頼された方は、調査された側の人との関係をどの様にお考えになるのかを、相談された側は知る必要があります。
次ぎに、依頼者のお考えが分かれば、相手との関係がお考えの通りにもの事を運ぶには何をどう考えて、どの様に行動に移せばいいのかの問題になります。
問題解決のためには、ひとつ一つの気になることを予め想定しながらも自分の考えている様な結論を導き出したいのが依頼者の大多数です。そこに同伴して、依頼者の気持ちを考えながら抱えていらっしゃる案件が解決に向かう様にアドバイスするのが調査後のカウンセリングです。
多くの興信所が行っているカウンセリングは、お客さんを獲得するためのカウンセリングのようです。電話で問い合わせをされた方の心情に合わせて同情し仕事につなげるのがカウンセリングだと錯誤の考えをされている業者が多いようです。
実際にあった間違ったカウンセリングです。
その方は、何軒かの興信所に電話してご主人の不倫の相談をされたのでした。しかし、全ての業者は、調査を勧めるだけで相談にはなりませんでした。興信所は何処も同じですか。と、いうご質問を何度も頂いたことがあります。更にひどいのでは、やはり夫の不審な行動について相談をされた人からのご意見です。
ご主人の不倫相談で、電話に出られたある興信所の女性相談員は、相談された女性に向かって「男性は夏になると発情して、浮気をよくする様になるので調査をした方がいいですよ。」と、おっしゃったそうです。
この言葉をお聞きになって、常識も何もない人間が電話口に出ている、相談の電話を入れたことが恥ずかしい。と、おっしゃっていました。この興信所のこの手の話は数人からお聞きしていますので、嘘ではないようです。
前記の様な不評を買う興信所は、個人の問題に関わる仕事をしてはいけないのではないでしょうか。この手の興信所は、個人のプライバシーを食い物にしている業者です。
これらの業者と一線を画すためにも、これからの興信所は「調査能力の向上」「プロファイリングの技法」「カウンセリングの力量」を身につけて信頼される調査業者になるべきではないでしょうか。少なくとも私は、前記の様な興信所と同じように見られたくはありません。自分が携わっている仕事に自信と誇りを持ち、皆様のお役に立ちたいからです。
尚、余談ですが、悪質といわれる興信所は業界からドンドン排除しなければなりません。それは、興信所イコール悪質業者、というレッテルを社会から貼られるのを避けるためです。現在日本には興信所などの調査業者の組織が幾つかあります。それらの業者は、加盟員増加を第一義に考えているのか、業者の質の向上をうたいながら、悪質業者を放置しているどころか、それらの業者を加盟員にしているのが実情です。そして、一番信用できる業者の集まりの様に広告しています。情けない話ですが、言っている事とやっている事が矛盾します。 |